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運命はうなずきました。

「毎晩、わたしが人間たちに投げてやった

贈り物を見ていただろう。

金と宝石を受け取った人々は生涯、金持ちでいられる。

しかし、小石と小銭しかもらえなかった連中は、

一生貧しく困窮する。

おまえは小石と小銭の日に生まれ、

おまえの弟は金と宝石の日に生まれたのだ」

兄は何とか成らないか運命に頼みました。

運命はちょっと考え込みました。

「おまえの弟には娘がいるが、

彼女も父親のように金と宝石の日に生まれた。

その娘と結婚しなさい。

そうすれば、彼女がおまえの幸運になるだろう。

しかし、おまえの所有するものは、すべて彼女のものだ

ということをくれぐれも忘れるんじゃないぞ」

貧しい男は運命に礼をいって急いで家に帰ると、

弟の家に行き、弟の娘との結婚を申し込みました。

弟が承知したので、結婚式があげられました。

ミリザが兄のところでくらすようになると、

たちまち運命が変化し、

あっという間に兄は金持ちになり幸せに暮しました。

この物語は大人の童話集に書かれている

「運命と中年」という話です。

「中年になると人は自分の限界を知り運命を受け入れ

心静かに人生を送るようになる。」

この物語はそれを教えているという人もいます。

この物語には続きが有って、豊かに成った男に、

旅人が「この農園は誰のものか」と尋ねます。

男は「この農園はわたしのものだ」と答えました。

すると農園は火事に見舞われ燃えて行きます。

男は慌てて「この農園は妻ミリザのものだ」

と言いなおしました。

すると火は消え農園は元に戻ったそうです。

そして、真夜中になると昨夜と同じように声がしました。

運命は立ち上がって小さな木製の箱のところに行くと、

銀貨をどっさり取り出しました。

「新しい魂には、今日、わたしが楽しんだだけの恵みをやろう」

運命は叫んで、銀貨をばらまきました。

朝になって男が目を開けると、そこはさらに小さな家でした。

その夜の夕食もさらに質素になっていました。

そして、夜中に猛々しい声が叫ぶと、運命はその日、

生まれた魂に銅貨をあたえました。

これが毎日続き、とうとうある日、男が目覚めると、

ちっぽけなあばら屋にいました。

運命は外にいて、食べる物を探していました。

その夜の夕食は小さなパンが一個でした。

真夜中に猛々しい声が叫ぶと、

運命は小さな木製のたんすを開けて、

小石と小銭をばらまきました。

「新しい魂には、今日、わたしが楽しんだだけの恵みをやろう」

運命は宣言しました。

「彼らは一生、今のわたしのように暮すだろう!」

朝になると、貧乏な男はまたもや壮麗な城にいました。

すると、運命が貧乏な男のほうを向いてたずねました。

「なぜ、はるばる、わたしに会いにやって来たのかね?」

「おれは朝から晩までいっしょうけんめい、働いているんです。

それでも、不幸ばかりが次々に起きる」貧しい男は説明しました。

「だから、その理由を教えてもらおうと想ってやって来たんです」

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